日共と米国民主党の構造的共通点──「進歩勢力」という名のガス抜き構造

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■ はじめに:マンダニ現象が示したもの

前回の記事「ゾーラン・マンダニ現象──サンダースの限界と、民主党が生み出した“新しいガス抜き”」では、
イスラム系で反シオニズム・反資本主義を掲げながら親イスラエル親ユダヤが主流の民主党から当選したゾーラン・マンダニという矛盾を取り上げました。

彼は民主党主流派(親イスラエル・ウォール街寄り)に批判的でありながら、
なぜか民主党という枠の中で活動できる。
この構造こそ、アメリカ政治における「体制内左派=ガス抜き装置」の典型です。

社会構造を示す図

■ 進歩勢力という“飼いならされた反体制”

アメリカ民主党は、リベラルな理念を掲げながら、
実際にはウォール街と軍産複合体を支える体制政党です。
しかし、民衆の不満を吸収するために「プログレッシブ(進歩的)」な派閥を党内に置く。
サンダース、そしてマンダニの登場はその“安全弁”の更新版にすぎません。

この構造は、戦後日本にもそっくり輸入されています。
その代表が、日本共産党です。


■ 「社会主義」から「民主主義」へ──日共の変質

かつての共産党は、資本主義と対峙する「革命政党」でした。
炭鉱、造船、国鉄などの現場に組織基盤を持ち、
まさに労働者階級の政党だった。

しかし冷戦の終焉とソ連崩壊で、「社会主義」という旗印は色あせます。
日共は方向転換し、「民主主義の守護者」「市民との共同」「ジェンダー平等」などを掲げ、
都市リベラル路線へと変質していきました。

その結果、労働者階級は置き去りにされ、
かつての支持基盤であった“弱者”が離れていったのです。


■ 「民主主義的進歩勢力」という言葉の罠

この転換を象徴するのが「民主主義的進歩勢力」という言葉です。
一見すると前向きで平和的。
しかしその本質は「体制の枠内での改善運動」。
米国民主党の「プログレッシブ」と同じ構造です。

本来の社会主義は、資本主義の枠組みそのものを問う思想でした。
ところが日共が社会主義を封印したことで、
残ったのは“体制を肯定しつつ、マナーを正す政治”です。
つまり、本質批判ではなく倫理訴求に変わったのです。


■ 労働者と弱者の離反

このリベラル化の代償は大きいものでした。

共産党の得票率は1990年代半ばの13%から、
近年では4〜5%にまで低下。

いまや支持層の多くは

  • 教育関係者、公務員
  • 都市中間層・高齢層
  • 意識の高いリベラル層

といった「生活が安定した階層」に偏っています。

つまり、
現場で搾取される側ではなく、“秩序を守る側”の左派になってしまった。
その結果、「弱者のための党」という看板が空洞化したのです。


■ 日共の親イスラエル・親民主党的態度

ウクライナ支援、イスラエル問題などでも、日共は明確に反体制を取れません。
「国際法」「人権」「自由」といった米国リベラルの言葉を借りて、
結局は米国の国際秩序観に同調しているのです。

民主党の“人権外交”を正義とみなす構造は、
まさに日本版の“リベラル帝国主義”。

日共がゾーラン・マンダニの当選に祝意を示すのも、
「同じリベラルな進歩派」という幻想の中での共鳴にすぎません。
実際にはどちらも、体制にとって都合の良い“左翼のかたち”です。


■ 「怒りの管理」という政治技術

民主党は怒りを制度の内側に吸収する。
共産党は怒りを倫理の言葉に置き換える。

両者は異なるようでいて、
どちらも民衆のエネルギーを体制の外に出さないための技術として機能しています。
これが、「ガス抜き構造」の本質です。


■ 結語──リベラル化された左派の末路

ゾーラン・マンダニ、バーニー・サンダース、そして日本共産党。
三者はいずれも、体制の中に“批判の余地”を作ることで、
体制そのものを延命させてきた存在です。

本来の「左派」は、既存秩序の外側に立ってこそ意味を持ちます。
しかし、リベラル化された左派はいまや怒りの管理装置に堕している。

いま求められているのは、
「体制を批判する左派」ではなく、
「ガス抜き構造を批判する思考」そのものです。