■ インド系イスラム教徒という異色の経歴
ゾーラン・マンダニ(Zohran Mamdani)は、アメリカ・ニューヨーク州議会の進歩派議員であり、民主社会主義者として知られる。
父親は著名な社会学者マフムード・マムダニ、母親は映画監督ミラ・ナイール。
出身はウガンダのイスラム系インド人家庭で、アフリカからアジア、そしてアメリカへと移民した家系だ。
この多層的な出自そのものが、アメリカ社会の“周縁”と“中心”をつなぐ象徴となっている。
彼の政治的立ち位置は、反シオニズム、反資本主義、草の根民主主義という、
民主党主流派が最も避けたがるテーマを正面から掲げるものだ。
■ なぜ民主党なのか──制度内での反体制という矛盾
マンダニが「民主党」に所属していること自体が、最大の矛盾に見える。
民主党の主流派は、ウォール街、軍産複合体、そしてAIPAC(親イスラエル・ロビー)と深く結びついている。
その中で彼のような人物が存在を許されるのは、党にとって“必要なガス抜き”だからである。
米政治では、二大政党制のもと、
体制に異を唱える者も「制度内で発言」しなければ排除される。
マンダニはその構造を逆手に取り、**体制の内側から構造批判を行う“内なる異端者”**として機能している。
■ サンダースの立ち位置と限界
バーニー・サンダースは、アメリカ政治における制度内左派の象徴だ。
「民主社会主義者」を自称しながらも、民主党を離れず、体制の枠内で改革を模索してきた。
医療無償化や富裕税の導入などを掲げる一方で、イスラエルの存在そのものには異議を唱えない。
つまり、彼の“革命”は体制を揺るがさない範囲での改革に留まる。
それが「サンダースの限界」であり、同時に「民主党が許容する左翼の限界」でもある。
民主党にとって、サンダースは長年、若者や少数派の不満を吸収する安全弁=ガス抜き装置の役割を果たしてきた。
だが、バイデン政権への協力や高齢化により、
彼の影響力は徐々に制度化・形骸化している。
■ サンダースの“後継”としてのマンダニ
サンダースが体制内で左翼を演じたように、
マンダニは**体制外から民主党を利用する“批判的社会主義者”**として現れた。
彼の登場は、サンダースが抱えた曖昧さ──
「体制批判をしながら体制に残る」という矛盾──を突き破る存在として、
進歩派の若者や移民層の支持を集めている。
民主党にとっても、マンダニは“脅威”であると同時に“新しい安全弁”だ。
ガザ侵攻をめぐって党の支持率が急落するなか、
マンダニのような人物が「真に人道的な左派」として存在することで、
党全体が“まだ多様性を保っている”という印象を作ることができる。
■ 日本メディアの浅すぎる幼稚な理解
日本のメディア報道は、この構造的背景を完全に見落としている。
「反トランプ」「民主党内の急進左派」「サンダースの後継者」といった表層的な見出しばかりで、
彼の思想的背景──反資本主義・反シオニズム・移民運動の連帯──をまったく掘り下げない。
それは、「民主党=リベラル」という単純なラベルを未だに信じる
幼稚な政治理解の表れにほかならない。
むしろマンダニの存在は、民主党がいかに体制維持のため“左翼の演出”を行っているかを示す生きた証拠なのだ。
■ 結論:民主党は左翼を演じる構造を必要としている
ゾーラン・マンダニの登場は、
「民主党が本当に変わる兆し」ではなく、
「変わったように見せかけるための新しい演出」だと考えるべきだ。
サンダースが体制内の改革派として限界に達した今、
民主党はより“純粋な反体制”を掲げる人物を内側に取り込み、
不満を吸収し続けようとしている。
マンダニはその最新モデルであり、
民主党という巨大な政治装置がいかに自己保存のために“左翼”を必要としているか──
そのことを如実に物語っている。