導入
「アメリカ産コメは残留農薬ゼロ! 関税を下げてもっと安く輸入を!」
──そんな声を耳にすることがあります。
だがその主張は、海を渡る“前”に何が起きているのかを知らない人の言葉です。
輸入米に潜む見えない工程
輸送コスト削減のため、米国から輸入されるコメの全ては精米済みの状態で日本へ向かいます。
しかし精米されたコメは、玄米に比べてカビや虫の被害を受けやすい。
糠(ぬか)という天然の防護膜を失っているため、長い船旅には向きません。
そのため出港前に、**防腐・防虫を目的とした燻煙処理(ポストハーベスト fumigation)**が行われます。
使われるのはホスフィン(Phosphine)ガス。
これは農薬取締法で「燻蒸剤」に分類される劇物で、倉庫害虫の殺虫に使われるものです。

出港前ガス室──ホスフィン処理の実態
米国の輸出業界関係者によると、
輸出コンテナは出港前に密閉状態でホスフィンガスを24時間充満させる。
航行中も再処理されることがあり、1回の航海で最大5回の燻煙が行われるケースもあるといいます。
現場の写真(業界関係者投稿)には、「Phosphine fumigation in progress」と記された黄色い警告札。
まさに“出港前ガス室送り”と呼べる作業です。

「日本向けは契約上なし」の建前
米国側の説明では「日本向け輸出分は燻煙なし」というのが公式見解。
しかし実務上は、**“出港前処理なら契約違反にならない”**という抜け道が存在します。
燻煙後に換気を行えば、ホスフィンの残留は一時的に減少。
日本側で検査する頃には“残留ゼロ”と表示できる。
つまり、**検査のタイミングが“トリック”**になっているわけです。
裏付ける文書と証言
米国農務省(USDA)の輸出ガイドには、
“Fumigation recommended prior to export.”
(輸出前の燻煙を推奨)
と明記されています。
さらに日本の通関士の証言によれば、
「書類上は“燻煙なし”でも、実際には燻煙済みの貨物がある」
とのこと。
つまり、「書類上クリーン」でも、現実は“ガス室経由”なのです。
安さの代償──見えないリスク
「残留農薬ゼロ」という美しい数字は、検査の仕組みを利用した時間差のマジック。
コスト削減の裏側には、消費者の知らない化学処理と、
それを黙認する国際取引の“慣習”が潜んでいます。
安さの代償は、燻煙リスク。
それを知ったうえで私たちは、何を選ぶべきでしょうか。